ウェブサイトのことを「Webサイト」と英語まじりで表記することが多いですが、正しくはカタカナで「ウェブサイト」です。その理由を説明します。

たとえばGoogleがSEOについて解説するサイト「Google 検索セントラル」では、「ウェブサイト」「ウェブページ」と一貫してカタカナ表記が使われています。
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日本語の文章は、漢字、ひらがな、カタカナが優先されて当然
なぜ「Webサイト」ではなくて「ウェブサイト」が正しいのか。
日本語の文章は、漢字、ひらがな、カタカナで表記されます。日本語なのだから日本の文字で書くのが当たり前なのですが、アルファベットでの表記も、ある場合にだけゆるされています。どれはどんなときかというと、英文字でなくては困るとき、例えば固有名詞とか専門用語の場合です。
ところでウェブサイトの「ウェブ」とは、ご存知のとおり、ワールドワイドウェブ (World Wide Web) に由来します。ちぢめて「ウェブ/web」とも呼ばれます。
World Wide Webという固有名詞の一部分だから「Web」の表記が正しいのだ、と思っている人がたぶん多いのですが、実はそれが間違いです。
「web(ウェブ)」は一般名詞なので、アルファベット表記する必然性がない
そもそも固有名詞の一部を切り取って「それも固有名詞」と主張するのは、無理があります。
たとえば「お前の名前は松尾だから『尾』も正式名称だよな」と主張されたら誰しもおかしいと思うはずです。ということは、「World Wide Web」という固有名詞の一部を赤の他人が勝手に切り取って「Webは固有名詞だ」と主張するのは、無理があります。
webとは「蜘蛛の巣」を意味する英単語です。World Wide Webの正式な略称ではなくて、単に「ちぢめてそう呼ぶ人が (世界的に) 多い」だけです。
ちなみに、World Wide Webの正式な略称は「WWW」です。
web は一般名詞で、かつ固有名詞だともいえないので、日本語文字での表記が優先されて「ウェブ」と書かれるのが普通です。英文字でなくては困る理由がないから、アルファベット表記にする必然性がないのです。
以上が「Webサイト」ではなく「ウェブサイト」が正しい理由です。
もしどうしても英文字表記したいのだったら「WWW」と書くべきでしょう。
ひとことでいうと
「むやみやたらにアルファベットにしないで、日本語で書けるんなら日本語で書こう」
という話です。
ではなぜ、「Webサイト」の表記を多く見かけるのか
以上、なんら難しい話ではないはずですが、大手メディアさえもルールを侵し、わざわざ「Web」の表記を使います。
その理由は「通例にのっとって」、つまり、みんなが使ってるっぽいからです。
また、英文字だと「なんかIT用語っぽい」というのも理由のひとつです。「IT用語だから英語のほうがたぶん正解じゃね?」的な。
日本語は、本当の理由や由来よりも「みんなが使っているから」を圧倒的に優先する文化なので、そっちが正しいといえばそうなのでしょう。
「WEB」と大文字表記するのは、なお悪い
「WEB」という大文字表記もありますが、これはもっとタチの悪い間違いです。
英単語が全て大文字で表記されるのは何かの略称である場合か、ブランド名などを特別に表記する場合に限られます。
例えば「WBC」は「ワールド・ベースボール・クラシック」の略です。また、ナイキの社名は「Nike」ですが、靴や服に入っているロゴに限って大文字の「NIKE」です。
ならば「WEB」は何らかの略称か、何らかのブランド名でなければなりません。
しかし、World Wide Webの頭文字をとっても「WEB」にはなりませんし、「W・E・B (ダブリュー・イー・ビー)」という名前のシステムは存在しません。
つまり「WEB」は誰かが勝手に作ってしまったブランド名か何か、ということになります。そんな表記を使ったらまずいですね。
余談
個人的な思いですが、ITやウェブ関係の用語というのは、この30年、ことごとくそのことでは踏み躙られてきましたよね。間違った用語の使い方が広まるとなかなか正されることはありません。「ホームページ」とかね。「ハッカー」とかね。
ちなみに、テレビのニュースがいう「ホームページ」も、間違った用法ですね。本当の意味や由来を考えれば「ウェブサイト」「ウェブページ」としか呼べないはずですが、それでもいまだに「ホームページ」を貫くのは「通例 = みんなに合わせて」が優先されてるってことです。おかしいと思います。