WordPressのメリットとデメリット

ウェブサイトを作るとき、またはウェブサイトの制作を依頼するとき、当たり前のようにWordPressで、という選択をする人も多いのですが、WordPressのメリットもデメリットも知った上で選択してください。

WordPressのメリット

更新を自分でできる

ウェブサイトの制作を依頼するさいかならず考えておかなければならないのが、完成したあと誰が更新をするか、です。ウェブサイトは作って終わりではありません。更新を続けて「育てて」いく必要があります。

ウェブサイトをHTML製で(静的ページ、といいます)作る場合、Adobe Dreamweaverなどのサイト管理ソフトと関連づけて制作します(そうでなければサイト全体の共通部分の修正ができないから)。

すると、更新作業にはDreamweaverが必要で、それが扱える人でなければ更新をできません。実質的には、更新のたびにウェブ制作業者にお願いをする必要があります。

ところがウェブサイトをWordPress製にしておくと、文章の入力作業はウェブブラウザ上でできるので、ちょっとした更新は自社ででき、ウェブ制作業者に依頼する必要はなくなります。

これは日本においてWordPressが大いに普及した理由のひとつです。

ドメインの制限がない

商売のためのウェブサイトには独自ドメインは必須です。Amebaのような無料ブログサービスや、Jimdoのような無料ウェブサイト制作ツールとWordPressを比較すると、ドメインの扱いに大きな違いがあります。

無料ブログサービスや無料サイトツールでは、それぞれのサービスが決めたドメインが勝手に割り当てられます。これは、検索エンジン対策の観点では不利な要素です。場合によっては、自分とは全く関係のない他のサービス利用者のサイトの動向が、自分のサイトの検索順位に影響をおよぼすこともありえます。

独自ドメインを持てばこの問題は解消します。ただし無料ブログサービスではたいてい、ドメイン割り当て利用料を払わなければなりません(ドメイン自体の購入費用とは別)。

WordPressを利用する場合は自分でサーバーを用意して独自ドメインを組み合わせますので、はじめからこうした不利はありません。

自由にレイアウトできる

無料ブログサービスや無料サイトツールは、サービスが提供するスキンしか使えません。「自由にレイアウトできる」とうたっているサービスであっても、ある程度の制限はかならずあり、全く自由自在に制作することはできません。

WordPressで作ったウェブサイトは自分で所有するものです。なおかつ、WordPressの開発者は世界中に大勢いますので、テーマ(見た目を変えるためのテンプレート)も非常にたくさんリリースされています。無料のものももちろんあります。

また、テーマファイルを改造したり自作すれば、いくらでも自由に制作できます。

自由に機能をつけられる

WordPressの開発者が世界中に大勢いることで、プラグイン(機能を追加するためのプログラム)もまた、非常に多くリリースされています。

ウェブサイトに追加されることのあるさまざまな機能のうち、およそ思いつくものはほとんどWordPressプラグインとして提供されていると言っていいくらいです。

また、プラグインとしてパッケージ化されているせいで導入がかんたんという面もあります。例えばカルーセルのような動きを静的サイトに導入する場合、Javascriptのライブラリを探してきていくらかコードを追加で書く必要があるのに対し、同じことをWordPressでなら、管理画面でプラグインを設定するだけで済んだりします。

技術者が見つかりやすい

WordPressを扱えるウェブ技術者を見つけるのは、その普及度合いのおかげで比較的かんたんです。他のCMSではなかなか苦労することもあります。

ウェブ制作者の側からしても、お客様から「WordPressで作ってほしい」と要求されることが多いので、勉強せざるを得ない面もあります。

ただ、有名であるあまりに、WordPressを扱えるという人材のレベルにはかなりのばらつきがありますので、注意が必要です。例えば、WordPressがわかるというウェブデザイナーに話を聞いてみたら、じつは「プラグインを駆使してウェブサイトを作ることはできるけど、PHPが全く分からないのでテーマの改造はできない」などということがよくあります。

WordPressのデメリット

自分でインストールする必要がある

無料ブログサービスや無料サイトツールでは、登録さえすればすぐにブログ記事を書くことができます。WordPressの場合は、自分でサーバーを借り、インストールする手順が必要です。

WordPressのインストール自体はかんたんです。レンタルサーバー会社の中には、いくつかの手順だけでインストールしてくれる機能を用意してくれている場合もあり、5分くらいで済みます。

ただ、自分でサーバーを借りる以上、ある程度の知識はどうしても要求されます。スマホしか触ったことがない人や、インターネットやサーバーの仕組みを全く知らない人にはまあまあ難しい作業といえるでしょう。

セキュリティに気をつかう必要がある

WordPressを使いたいなら、ウェブ上のセキュリティについても知る必要があります。それができないなら使わないほうがいいくらいです。

WordPressは、それ自体がプログラムのかたまりです。そしてこの世に存在する、人間の作ったものは何であれ完璧はあり得ません。

WordPressも例外ではありません。ときどきプログラムの穴があります。そこを他人に悪用されると、あなたのサイトが勝手に謎の広告を出し続けたり、知らないうちに中身が書き換えられたりということが起こります。そうなると最悪、ウェブサイトを削除せねばならないかもしれません。

そういうことが起こらないためには、サーバーやWordPressのことをよく知り、いくつかのかんたんなことを守ればいいのですが、それを「よくわからないから」などといって怠る人&企業が非常に多く、ウェブサイトを危険に晒しています。

WordPressは世界で一番有名なCMSなので、悪い人もターゲットに選びがちです。改ざんなどの事案は実際に起こっていて、私の顧客にも遭遇したケースが複数あります。「うちには関係ない」なんて誰にも言えません。

カスタマイズのハードルが高い

WordPressはカスタマイズが自由であることをメリットとして挙げました。ただし、思い通りのカスタマイズをするためには多くの知識が必要です。

WordPressプラグインは、あまりに数が多いので、どのプラグインがやりたいことに適しているかは自分自身で判別せねばなりません。

テーマファイルを改造すればどんな表示も自由自在ですが、そのかわり、改造にはPHPというプログラミング言語やHTML、CSS/Sassの知識が必要です。それらの知識がない人ができるのは、せいぜいプラグインやテーマの設定を変えることくらいです。

テーマファイルのオリジナル制作を依頼する場合、デザインとプログラミング両方が必要なので、費用もそれなりにかかります。

ウェブページの表示が遅くなりがち

WordPressそれ自体がプログラムのかたまりである以上、ウェブページを表示させるたびにサーバーに負担がかかります。

サーバーの負担といっても、ふだんは微々たるものです。でもアクセス数が急増すると、突然その影響があらわれます。ウェブサイトが急に「重く」なったり、一時的に表示できなくなってしまった、ということがWordPress製サイトでは起こりやすいのです。

HTMLとCSSだけで作った静的サイトのほうが圧倒的に「軽い」ので、同じサーバーを使っていてももっと多いアクセス増に耐えられます。

ウェブサイトの表示が遅い(「重い」)ことは、じつは検索エンジンの評価にも関係があります。見るのにストレスがかかるというだけではなくて、検索順位、ひいては商売のゆくえに直結するかもしれないことです。

また、初心者ががんばってカスタマイズしようと、やたらめったらプラグインを入れたり、下手なテーマファイルの改造をやると、WordPressの動作を「重く」します。だからカスタマイズはよくよく知識を持ってやらないといけないのです。

常にアップデートが必要

セキュリティの穴をなくすため、またより豊かな機能のため、WordPressの開発者はいつもがんばっています。というわけで、WordPressは常にアップデートが必要です。これは結構な頻度なので設定で自動化することもできます。

WordPress本体に限らず、プラグインやテーマもアップデートされます。

オリジナルのテーマや改造したテーマを使っている場合、アップデートによってサイトの見た目が崩れたり何らかのエラーが出たりすることもあります。その場合はウェブ技術者に依頼して直してもらう必要があり、費用もかかります。

かといって「アップデートしてどこか変わったら困るから」という理由で何年もアップデートを無視していると、今度はセキュリティ上の問題がふくらみます。WordPrssは常にアップデートし続けるもの、と考えて使わなくてはなりません。