問い合わせフォームの作り方 : 意図しない入力を避けるには

問い合わせフォームは受注や依頼の大切な窓口ですが、誰にも開かれている以上、意図しない入力も必ずやってきます。意図しない問い合わせを避けるためにはどうしたらいいか、フォームを作る際の判断ポイントを挙げます。

意図しない入力を100%完全に避けることはできませんが、工夫次第でできるだけ減らすことはできます。

問い合わせフォームをHTMLでどう作るかとかデザインやプラグインの話は別記事に譲ります。

入力する人を信用しない

のっけから感じの悪い言い方ですが、訪問者が「常にこちらが意図したとおりの入力をしてくれる」とは考えないほうがいいでしょう。

問い合わせフォームとは、できるだけこちらの意図どおりの情報が得られるように、工夫をして作るべきものと考えるのが正解です。

意図しないフォーム入力の例

例えば、意図どおりでないフォーム入力にはこんなものがあります。

  • 名前の欄にニックネームを入力された (本名を入力して欲しかったのに……)
  • メールアドレス欄に、捨てアドサービスのアドレスを入力された (後から連絡の取れないメールアドレスなんて、意味がないのに……)
  • 「問い合わせ内容を詳しく書いてください」というテキストエリアに「よろしくお願いします」とひとことだけ書いて送ってきた (詳細がわからないと対応のしようがないじゃない……)
  • 「私どもへのご依頼は、ここから送信してください」という意図のフォームなのに、逆営業メールばかり来る……

なぜ人はこちらの意図通り入力してはくれないのか? それは、悪意があってわざとそうしている場合もあれば、悪気はないけど面倒臭い、何を入力していいかわからない、という場合もあります。

シンプルな問い合わせフォーム (3点フォーム) はNG

まず基本として、入力欄が3つだけ (名前、メールアドレス、本文) の「3点フォーム」を作らないことです。

なぜなら、「3点フォーム」は利用者が「何を書けばいいか」を自分で考えなければならないからです。

利用者が自分なりに考えなければならないということは、入力内容が人によって大きくぶれるということです。つまり、こちらが意図しない入力をする余地が大きいということです。

また、なんでも入力できることを逆手にとって、スパムや逆営業の入力にも使われやすいのが「3点フォーム」です。

「問い合わせフォームはできるだけシンプルであるべき」という、どこかに書いてあったことを鵜呑みにしている人が多いですが、これがよくありません。問い合わせフォームは面倒でない程度に項目を増やしたほうがいいです。理想は病院の問診票です。

分けるべきところは分ける

  • 名前の欄にニックネームを入力された (本名を入力して欲しかったのに……)

例えばこのような「意図はずれ」を避けるには、名前の入力欄をひとつではなく、姓と名に分ける方法があります。

  • 「依頼内容」というテキストエリアを用意しておいたのに、書かれた内容が簡潔すぎてもう一度連絡して尋ねなおさなければならない

例えばこのような意図はずれを防ぐには、尋ねるべきことを分けてそれぞれに入力欄を作ることです。例えば「希望納期は?」「予算は?」「目的を教えてください」など、質問をより具体的にします。

無駄な入力欄はなくす

今まで「問い合わせフォームはシンプルであるべき」と信じてきた人にとっては、実際に必要な入力欄は想定よりも多いのですから、利用者の利便性のため、無駄な入力欄をなくしましょう。

例えば…

  • 住所の番地や郵便番号まで入力してもらう必要は本当にあるでしょうか? 都道府県名くらいで十分だったりしませんか。
  • メールアドレスを2回入力してもらうのは本当に意味ありますか?
  • 「件名」欄って本当に必要ですか?
  • 性別を入力してもらう必要って本当にあるでしょうか?
  • 電話番号の入力を求める必要って本当にあるでしょうか?
  • 会社名はともかく、役職まで書かせる必要って本当にありますか?

「でも、上司が/クライアントが要るって言ってるから要る」? 好きにすれば。

選択肢が設けられるところは、できるだけそうする

selectタグ、チェックボックス、ラジオボタンで選択肢を作れるなら、利用者は文字を入力する必要がないので、情報のブレが少なくなります。

ラジオボタンを使って「はい/いいえ」で答えさせるのも良い方法です。

文字数を適度に制限する

  • 「問い合わせ内容を詳しく書いてください」というテキストエリアに「よろしくお願いします」とひとことだけ書いて送ってきた

例えばこのような意図はずれを防ぎたいなら、フィールドを入力必須にするのと同時に「最低でも何文字は入力しないと送信できない」という設定も施します。

  • 肩書き欄を用意しておいたら、なぜか長々と自己紹介文が記入されていた……

例えばこのような意図はずれを防ぎたいなら、逆に最大文字数 (何文字までしか入力できない) を設定しておけばいいです。

設定のしかたは、作り方によります。

inputタイプを適切に選ぶ (<input type=”~”>)

HTMLのinputタグには入力内容に合わせた型が存在するので、適切なtypeを選ぶようにします。email, url, numberなどです。

これらは見た目は似たようなテキストフィールドですが、問合せフォームプログラムやブラウザによっては、適切なデータの型かどうかをチェックする機構が働きます。

「メールアドレスやURL欄に全角で入力された」とか、「数字を入力してほしかったのに自由入力された」といった意図はずれを避けることができます。

<input>: 入力欄 (フォーム入力) 要素 – HTML: HyperText Markup Language | MDN

自動返信のメールアドレスは「do-not-reply」

フォームプログラムやプラグインで、入力された問い合わせに対して自動返信メールを設定することがあります。その際の送信元メールアドレスは「do-not-reply@ドメイン (実在しないアドレス)」とします。

なぜかというと、悪意のフォーム送信があるからです。

自動返信の送信元を実在のメールアドレスにしておくと、かなりの確率で、そのメールアドレスには迷惑メールが増えます。最近では、別の全く関係のないサービスのフォームに勝手に入力されるというスパムもあるそうな。

問い合わせフォームに限ったことではないですが、実在するメールアドレスはできるだけウェブ上には公開しないのが吉です。

また個人店や小規模事業者の場合、とてつもなく失礼な内容の問い合わせがくる場合もあります。実在のメールアドレスを知らせないでおけばスルーもしやすいです。

「捨てアド」やフリーメールを制限する

「捨てアド」は一時的に作って数分から数日で消滅するメールアドレスで、無料で作成できるサービスがいくつも存在します。

場合によりますが、「捨てアド」のブロックを自衛のために検討してみてください。

問い合わせフォームに「捨てアド」を入力されると、後から連絡を取れないので、サイトの運営者からするとおおむね迷惑な場合が多いです。また、冷やかしやスパムに使われることも多いです。

「捨てアド」で使われるドメインはある程度判明しているので、それをもとにブロックすることができます。設定方法はフォームプログラムによります。

場合によってはYahoo、Gmail、iCloudなどのフリーメールアドレスや携帯電話専用アドレスも、ブロックすることを考慮してもいいかもしれません。例えば、取引相手を企業に絞りたい場合、企業人が会社のメールアドレス以外を入力することは考えられませんので、Yahoo!メールをブロックしても問題ない、ということになります。

まとめ: 問合せフォームで意図しない入力を避けるポイント

この記事でお伝えしたかったことは主に次のとおりです。

  • 問い合わせフォームは、誰にも開かれている以上、意図しない入力や悪意の入力もある。できるだけこちらの意図どおりの情報が得られるように、工夫をする必要がある。
  • 問い合わせフォームは、面倒でない程度に項目を増やしたほうがいい。入力欄が3つだけ (名前、メールアドレス、本文) の「3点フォーム」を作らない。
  • 入力欄を分ける、選択肢を設ける、文字数を制限する、などの工夫をする。
  • 自動返信メールの送信元は、実在しないメールアドレスにする。
  • 捨てアドやフリーメールアドレスは、必要であればブロックを検討する。

運用してみてはじめて「こんな意図はずれがあるんだな」と気づくことも多いと思います。なので問い合わせフォームは作って作りっぱなしよりは、公開後に何度かチューニングをする機会を設けられればベストですね。