地域情報サイトのマネタイズ、という課題に取り組んでいます。そこで、自分の学びを兼ねてまとめてみます。
ウェブメディアとかオウンドメディアとかブログサイトとか、いろんないいかたがありますが、何らかの情報を継続して発信することを本分としているウェブサイトをここでは「ウェブメディア」と呼んでおります。
慈善事業では続けられないから、マネタイズ
地域情報サイト = 地元 (ローカル) の情報を発信するウェブサイトを作ろう! というテーマは古今東西、普遍的な人気があります。
地方活性化や観光といったキーワードとの相性が良いので、行政方面から良くしていただけるチャンスもあります。
ただ、続けていくにはお金が必要です。しかし、地域の魅力を発信することにどれほど意義があり、行政からものすごく期待が高いとしても、そのサイト運営のためにたっぷり予算がつく、というケースは正直、聞いたことがありません。
というわけで、個人の趣味でないかぎり、ウェブメディア自身がお金を生み出すしくみ作り = 収益化がほとんど必須であるといえます。マネタイズできずに廃止されていった地域系ウェブメディアはそれこそ山のようにあるでしょう。
ウェブメディアが稼ぐ手段は2種類しかない
ウェブメディアそのもので稼ぐ手段は、基本的には2種類しかありません。
- 購読モデル
- 広告モデル
購読モデル
購読モデルとは、新聞や雑誌でいえば、そのものを手にとって買うことです。でもウェブメディアにはそれができません。代わりにできるのはこれらです。
- 有料記事化
- 会員制サイト化
広告モデル
広告モデルとは、ウェブサイト内に広告を出してそれを収益源とすることです。
- 純広告
- 広告記事
- Adsenseなど広告配信ネットワーク
- アフィリエイト
- 物販、サービス販売 (厳密には広告ではないけど、メディア内で宣伝する)
ここからは、それぞれの方法について説明します。その方法で稼ぐにはどうしたらいいか、その方法で稼ぐための課題を挙げていきます。
手段1: 購買モデル = 有料記事 ※相性悪い
購買モデルで稼ぐには
- メディアそのものや書いている人に高い権威がある
- 新聞社、一部でカリスマ的な人気のある著者が書いているブログサイトなど、権威があると購入されます。
- 独自性の高い情報を扱う
- ある業界に絞った専門的なニュースサイトなど、他では得られない情報が載っていると購入されます。
購買モデルの課題
今回取り組んでいるケースでは提案しませんでした。なぜなら、地域情報サイトは、有料記事とは相性が悪いと思ったからです。
その理由は2つあります。
- ひとつ、地域情報サイトで取り上げる情報は誰でも知りえるものが多いので (イベントや地域のお店の話題など)、有料で限定する意味があまりない。
- ふたつ、「そのメディアを見たきっかけで、地域を訪れたくなる」という行動を期待しているから、広く自由に見てもらえるほうが断然得なはず。
手段2: 純広告
純広告とは、運営しているウェブサイトに広告枠を作り、その枠に広告主が広告バナーを掲載する代わりに料金を頂戴する、という方法です。
純広告で稼ぐには
- 広告枠を増やす
- 販売する枠が多ければ、それだけ収入も期待できます。
- PVを増やす
- 「月間50万PVを何年ものあいだ維持してます」といったわかりやすい実績があれば、広告枠を高く売れます。
純広告の課題
- 運営メディアが広告枠だらけになってしまっては、読者の反感を買うだけで何もいいことがありませんので、置ける広告枠は限られます。
- 枠が限られる以上、このモデルで収益を上げたいならば、広告自体の価値 = 価格を釣り上げるしかありません。
すなわち、わかりやすい実績をつくる = PVをガンガン伸ばすしかありません。
手段4: 広告記事
広告記事とは、広告主のお店・商品・サービス等についての記事を、ウェブメディアが有料で書くという方法です。記事の制作に料金をかける、掲載期間について料金をかける、などが考えられます。
広告記事で稼ぐには
- たくさん契約をとる (営業力がある)
- 記事の契約が多ければ収益が増えます。
- 記事のクオリティが高い
- その記事が実際に来店や購入につながったという実績があれば、それ自体が広告塔となり、契約数や単価を増やせます。
広告記事の課題
- 広告記事の数や質については慎重にルールを設けるべきです。
- 広告記事 = 広告主からお金をもらって書く記事、です。広告主のすべていいなりになる必要はありませんが、ある程度の忖度は発生するでしょう。広告記事だらけのウェブメディアが、果たして読者の支持を得られるでしょうか。
- 結局のところ1記事あたりの料金を上げていく必要があり、それには、やはりわかりやすい実績 = PVを伸ばすこと、が必要になってきます。
手段3: 自動広告配信 (Google Adsenseなど)
ウェブサイト上にコードを埋め込むことで自動的に広告を配信します。広告がクリックされると収益が発生します。
Google Adsense で稼ぐには
- 自動配置システムなどでたくさん広告を置く
- 広告数はある程度多い方が収益が増えます。
- PVを増やす
- クリックされる回数が増えると収益が増えます。
- 儲かるジャンルの記事を書く
- 広告はある程度記事の内容に応じて配信されるので、リスティング広告の入札額が高いジャンルの記事を書くと、収益が上がります。
Adsense 等の課題
- 儲かるジャンルがあるということは、逆にいうと、あまり儲からないジャンルもあるということです。
- クリックあたりの金額は少ないので、1サイトでスタッフを雇えるくらいの収益を目指すのなら、PV至上主義に走らざるを得ません。
- やじうま的な一過性訪問者のほうがクリックしやすい傾向があります。
- 配信する広告は自分で選べるわけではありません。違法広告や不快な広告も垂れ流しにされるので、メディアサイトの雰囲気を大きく損なうことがあります。不快広告をブロックするなどもできますが、管理はそれなりに大変です。
手段5: アフィリエイト広告
ある商品やサービスの広告を運営メディア内に掲載して、商品が売れたり契約に至れば広告料が入ります。レビューないし紹介記事を書く必要があります。広告はアフィリエイト広告プロバイダ (ASP) で取得できます。
アフィリエイト広告で稼ぐには
- 売れる商品を扱う
- 売れやすい商品を扱うと収益が増えます。メディアのテーマに沿った商品を紹介することが大切です。
- SEO知識が必要
- あるキーワードで検索上位表示されれば商品が売れます。
アフィリエイト広告の課題
- ノウハウがめちゃくちゃ多いので、実際に収益を上げるまでは相当時間がかかるかもしれません。
- 広告バナーを貼るだけでは、全く収益が出ません。紹介する商品・サービスが売れてはじめて収益が上がります。「当メディアが、責任を持ってこの商品をおすすめしますよ」というスタンスを見せなくては売れません。
- メディアのテーマや地域に沿った広告が見つかればいいのですが、全然関係のない商品を、広告料が高いからといって無理やり紹介するようなことは、できればしたくありません (そもそも売れづらいはず)。
手段6: 物販
自分達で商品を開発して、メディアサイトと関連づけて売る方法です。もしくは、地域に根ざした商品を仕入れることも考えられます。
物販で稼ぐには
- 他にはない独自の魅力がある商品であれば売れる
- そのメディアでしか買えない、特別な商品であるほうがいいです。
- メディアの世界観やコミュニティにマッチしていると売れる
- メディアの世界観や読者のライフスタイルと密接に関わりのある商品が売れます。理想は、ほぼ日における「ほぼ日手帳」です。
物販の課題
- 商品の開発費ないし仕入費がかかります。
- 売り方のノウハウが要ります。「バナーを貼る」「ショッピングカートを作る」だけでは売れません。また「いい商品だから勝手に売れる」こともあり得ません。というわけで、商品の魅力を伝えるページを作る、工夫をすることが必要です。
- 買う理由、買うメリットを伝えることが重要です。よくある「地元応援」のようなフレーズは耳触りはいいですが、読者にとってはこれだけでは購入動機になりません。「ベネフィット」がなければ作る (提案する) 必要があります。
- 販売をオンラインで行うのはいいとして、メディア内にショッピングカートまで設けるのはおそらく使い勝手的に問題があるでしょう。ということで、メディアサイトとは別にネットショップを構築 & 運営するのが現実的です。つまり、そのノウハウも要るということです。
手段7: サービス販売
ウェブメディア運営のノウハウや人的ネットワークを活かして、何らかのサービスを提供するという方法です。例えばウェブサイト制作、メディアサイトを運営したい人へのコンサルティング、広報支援などが挙げられます。
サービス販売で稼ぐには
- サービスをパッケージ化すると売れます
- 「どの範囲、どの期間、どの量」のサービスをいくらで提供する、とはっきり決めておくと売れやすいです。
- 実績があると売れます
- 実績があると次の依頼も来ます。最初の実績を作る際にはメディアそのものの知名度も効いてきます。
サービス販売の課題
- 厳密には「広告」とはいえませんが、メディアサイト内で「こんなサービスがありますよ」と自己広告するのが良いでしょう。
- 依頼者向けの検討用資料や受注用のウェブページを作り込んでおく必要があります。
- サービス販売が主になってしまうと、メディアサイトの存在意義が薄れていきます。立ち位置の明確化、共有が大切です。
どれが一番マネタイズしやすいのか
以上、いろんな手段を挙げましたが、一概にどれが一番マネタイズしやすい・稼ぎやすいということはなく、メディアの運営方針に合わせて考えていくべきものでしょう。複数を組み合わせたり、順に試していくしかありません。
以下は個人的な見解ですが、おおまかには次のような選択がよいのではと思います。
独自性を捨ててでもPVをガンガン伸ばす方針ならば
独自性を保ち、「書きたい」ことを書くメディアでいたいならば
PV至上主義 or 独自性
どんな方法であれ、収益を増やすにはPV (ページビュー数) を稼ぐに越したことはありません。ただ、PV至上主義と独自性は、ある程度トレードオフの関係でもあります。
PVを伸ばすには、テンプレがあります。
- 人が話題にしやすい、わかりやすいネタを率先して書く
- 1日に何回も投稿する
- それらを複数のSNSで流す
ローカルメディアでいうと「お店が開店/閉店したみたい」系の記事 (取材はせず沿道からの外観写真を載せるだけ) なんかはテンプレ的によく使われる手法で、こうしたテンプレ化されたサイトによるフランチャイズビジネスも既にあるようです。
ただ、疑問に思うことがあります。「開店したみたい」系記事を流す地域メディアがもし同じ地域にふたつ以上あっても、私の個人的な読者目線からいうと、何も嬉しくないし、ウェブ戦略やSEOの視点からみても食い合いになるだろう、という点です。
PV&収益のためならテンプレ化も辞さず、という方針でも別に構わないですが、独自性が薄まり、結局読者が去っていくことも予想されます。つまり矛盾が発生するわけです。
問題は、「あなたのメディアで、それをやりたいかどうか」
おそらく、そのメディアを始めた思いや、大事にしたい考え方があるはずです。それらをかなぐり捨ててでも、PVを追い求めたいのか、否か。
結局のところ、オリジナルな視点や個性を保ちつつ、書きたいことを書きつつ、収益を上げていく道を探るしかないのでしょう。それがウェブメディアのおもしろいところであり、難しいところだと思います。